「タクティクスオウガリボーン」について、そのゲームバランスを一部分再調整するMODがNexusで配信されていましたので、試してみました。
はじめに
振り返れば昨年の夏、Steamの半額セールでタクティクスオウガリボーンを買って一応はクリアしたものの、「もう二度とやる事はないだろうな」と感じてその日のうちにアンインストールした僕ではありますが…この秋FFTのリマスターが発売されるという発表を受け、「タクティクスオウガリボーンとは一体なんだったのか」、冷静に見直してみるべきかなとも思うようになりました。
とはいってもこのゲーム、何かとゲームシステムやゲームバランスが槍玉に挙げられており、僕も通しで遊んでみていくつかの不満点があったというのは以前プレイログにも書いた通りです。
そこで改めて遊び直してみるにしても、MODは出てないんだろうかとNexusで検索してみたところ、「ユニオンレベル削除」「レベルシンク削除」「クラス要件を削除(SFC版のようにすべてのクラスがすべての武器防具を装備できるようになる)」といったMODが配信されていました。
どれもこれも試してみたいなぁとは思うものの、今回はゲームシステムにちょっとした変更点を加えるという「TOR Micro Overhaul」というMODを試し、その効果をまずは確認してみることにしました。
TOR Micro Overhaulの概要と導入方法
TOR Micro Overhaulを導入すると、以下のような調整がゲームに入ります。
- 攻撃に関する命中率の計算式を再調整。
- 回復魔法にスケーリング(効果の成長)を追加。
- ローグを選択可能にした。
- ほぼすべてのユニットの基本WTを統一した。
- その他、細かな快適性(QoL)の向上。
- オフハンドバグの修正。
…となっています。
導入方法についてですが、まずはTOR Micro Overhaulの配信ページより、MODファイルをダウンロードします。
以下はこの記事を書いている時点での最新バージョン1.20での説明です。またMODの導入は自己責任で行なってください。MODを導入することで起きたいかなる問題についても、僕は責任を一切取りません。

ダウンロードした圧縮ファイルを展開すると、
- FileTable.bin
- battleフォルダ(中にbattle_data_release.dat)
の2つが入っているはずです。あとは「FileTable.bin」と「battle_data_release.dat」をタクティクスオウガリボーンのゲームフォルダの中にある同じデータに上書きしてやればいいだけです。しかし念のため、上書き前に元のデータのバックアップを取っておくといいでしょう。
形としては「MODを導入する」というよりは「ゲーム本来のデータを改変する」に近いと思います。導入自体は楽でいいですね。
MODによる変更を確認する
以下に、バニラデータとMODによる変更とでどのような違いが出るのかを比較してみます。
攻撃に関する命中率の計算式を再調整
これはどういうことかというと、ざっくり言えばユニットが向いてる方向の重要性が上がります。作者さんはこの調整について、以下のように書いています。
バニラ版では、第1〜2章までは命中率が要素として存在していましたが、それ以降はほとんどの攻撃が100%命中になり、AGI(敏捷)やAVD(回避)のステータスが意味をなさなくなっていました。これはポジショニングなどの戦略性も損なっています。
原因は主に2つあります:
- 武器スキルのランクによる命中補正は該当武器使用時のみ有効で、回避補正はその武器からの攻撃にしか効かない。
- DEXやAGIが命中率に与える影響はせいぜい+1%程度で、AVDが回避率に与える影響は0.6%ほど。そのため、レベルが上がると自然と命中率が100%を超えてしまう。
そこで、命中率に関する多くの計算式を調整しました。今では同じステータスを持つ攻撃側と防御側がいれば、ボーナスは打ち消し合うようになっています。また武器スキルのランクによる命中補正も廃止しました。
さらに、ゲーム内でステータスの使われ方に一貫性がなかった点も修正。例えば盾によるAGIのボーナスはが兜のAGIボーナスより高く扱われていたような不統一を解消。すべてのステータスが均一に扱われるようになりました。
これにより命中率が意味を持つようになりますが、極端に大きなパラメータ差がない限り“外れまくるゲーム”にはならないはずです。
※この調整は主観的な面も強いため、使用感のフィードバックは歓迎します。
具体的に命中率に関係する各ステータスの影響力がどのように変更されたのかについてもMODページにも書かれていますので、興味のある方は読んでみてください。長いのでここでは割愛します。
では実際のどのような変化が見られるのかについてですが、僕のゲームクリア時のデニムで簡単に確認してみました。

実験に使うのはゲームクリア時の、レベル40 ウォリアーのデニムです。ブリュンヒルドを装備し、片手剣スキルのランクは40となっています(詳細には装備補正でさらに+20)。どういう育て方をしてきたかはさっぱり覚えていませんが、そこそこ育った状態です。
このデニムを、同じくレベル40のラヴィニスに攻撃させます。

作者さんも触れていますが、バニラのデータでは2章ぐらいまでは攻撃方向で変化する命中率に気を使う必要があるものの、それ以降に関してはこのように正面から攻撃を仕掛けても簡単に100%の命中率が出てしまうというのが問題でした。実際にデニムの攻撃命中率は正面への攻撃にも関わらず100%です。また同じく、ラヴィニスもデニムへの正面反撃の命中率が100%となっています。
作者さんの言う通り、命中率の内部計算は100%をあっさり超えてしまっているのでしょう。そのため、命中率を高めるために横に回って攻撃するとか、背後から攻撃するといった意味そのものが薄れてしまっています。

しかしMOD導入後は、ラヴィニスへの正面への攻撃は命中率が90%になったほか、ラヴィニス側は53%とだいぶ落ちているのが確認できます。デニムはまだ攻撃が当たるかもしれないと思えますが、ラヴィニスの反撃はだいぶ信頼性に欠ける数値になりましたね。
このようにバニラよりも「どの方向から攻撃したか」の命中率に明確な違い、差が出るようになります。どの方向を向いて待機するか、どの方向から攻撃するかがより重要になります。
命中率は使う武器、クラスのパラメータ補正、地形などによっても左右されるところはありますが、レベル40まで育ったデニムですら正面攻撃で90%だと、ゲームスタート時のまだ弱々しい時期の命中率はかなりシビアな感じになるかもしれません。
回復魔法にスケーリング(効果の成長)を追加
これは誰が使ってもほぼ固定値しか回復しない回復魔法に、術者のパラメータが影響するようになるという変更です。
具体的には回復量の基礎値を下げた上で、術者のMND、VIT、RESが回復量に乗るようになるとのこと。バニラではMNDが0.05(つまり5%?)しかスケーリングに影響しないというものだったらしいのですが、それがMODではMND 0.60、VIT 0.10、RES 0.10がそれぞれ回復量のスケーリングに影響するとのこと。

実際にカチュア姉さんのヒールIIIで回復量を比較してみましたが、バニラが255に対し、MODは306と結構回復量に違いが出ますね。ちなみにヒールIVについては2回回復するように変更されているそうで、1回目はHPの%回復、2回目はステータスによる追加回復となるそうです。
まぁ確かに回復魔法の価値は上がってますが、これは敵側のクレリックも同じこと。魔法による回復量が上がったことで思わぬ苦戦を強いられるかもしれません。
ローグを選択可能にした
これはタクティクスオウガリボーンにおいて自軍では使えなくなったクラス・ローグを復活させ、自軍でもローグを使うことができるようになるという変更です。

ローグへのクラスチェンジについては2章から羊皮紙とインクで「盗賊の証」が合成可能になるほか、戦闘中の勧誘も可能だそうです。

盗賊の証を手に入れたら、あとは通常通りクラスチェンジするだけです。なおクラスチェンジは人間だけでなくフェアリーやグレムリンも対象になっているとのこと。ローグ自体は敵として登場するため、敵データそのままにアイテムやスキルのセットが可能なようです。

実際に戦闘に出撃させると、ちゃんと自軍の青い色のローグとして表示され、動かすことができます。余談になりますが昔SFC版やPS版のタクティクスオウガで改造コードを使って敵専用のクラスを呼び出しても赤い色のままだったり、ユニット一覧でグラフィックが正しく表示されないなどの問題がありましたが、リボーンでは見た感じそういう問題はないようですね。
…っていうかリボーンの土台となっている運命の輪ではローグって自軍でも普通に使えたクラスだったんですけどね。なんで削除されちゃったんだろう?「ローグを使わせろ!」と不満を抱いていた方には朗報だと思います。
ほぼすべてのユニットの基本WTを統一した
タクティクスオウガリボーンでは汎用ユニットと固有ユニットを比較した場合、中でもどうあがいてもひっくり返しようのない性能と言えたのが「基本WT」です。この数値はレベルアップでは変動せず、ゲーム中では変更不可能なものになっています。
WTは低ければ低いほどそのユニットに行動順番が早く回ってくるというゲーム上非常に重要なパラメータのひとつですが、固有ユニット(ボスユニット含む)は汎用ユニットよりも基本WTが低く設定され、優遇されているという状態でした。言ってみれば明確な「格差」、です。
しかしMOD導入後は一部のユニットを除いてこの基本WTの優遇が削除され、50に統一されました。あとはそこにクラス補正が加わるという形になっています。

実際どのように違うのかについては、ラヴィニスで比較してみました。上の画像はどちらもレベル40でヴァルキリー、装備を全部外した状態のラヴィニスです。バニラではWTが64となっていますが、MOD導入後では76と増加しており、ラヴィニス特有の身軽さが消えてしまっています。
この基本WTの格差はじわじわと効いてくるもので、基本WTが低いユニットが揃ってくる中盤以降はプレイヤー側には有利な要素ではあります。それが消えるというのは惜しくもある…ただ敵のボスユニットもこうした基本WTの優遇が消えているのでおあいこというか、純粋に装備やスキル構成で勝負できるという意味では面白いかもしれません。
なお「ほぼすべての」とあるように、例外となっているユニットもいます。それはオズマで、オズマのみバニラから変更がないそうです。このタクティクスオウガの裏テーマは「ワガママな姉さんとどう向き合うか」なので、オズマ姉さんが優遇されるのは仕方のないことですな(本当か?)。
その他、細かな快適性(QoL)の向上
その他の調整には以下の内容が含まれています。
- マジックリーフが合成可能になる。
- クレリック、ウィザード、ヴァルキリーに新たな勧誘スキル追加。
- 棍の武器ダメージ計算式の変更。
- 一部の槍の射程距離を変更。
となっています。

まずMOD導入後は、ショップでマジックリーフの合成が可能になります。必要となる合成材料はキュアリーフのみで、簡単に作れるようになっています。
バニラのタクティクスオウガリボーンではマジックリーフがレアアイテム扱いで購入できず、MP回復アイテムを気軽に使えなくなり、それが難易度を上げる要因ともなっていました。しかしマジックリーフの合成が解禁されることでMP回復アイテムの確保が容易になり、これで瞑想の発動を天に祈るなんてことも少なくなるかもしれません。
序盤から即時MP回復が可能になれば魔法や必殺技、スキルもかなり運用しやすくなるので、攻略にも大きな変化が生まれると思います。特にキラースキルをすぐに使えるようになるのは大きいんじゃないですかね。

またクレリック、ウィザード/ウィッチ、ヴァルキリーには勧誘スキルが新たに追加されています。
- クレリック:支配・死霊系
- ウィザード/ウィッチ:契約・悪魔系
- ヴァルキリー:契約・精霊系
作者さんによれば序盤でこれらモンスター系のユニットを仲間にしたい人向けに追加したとのことです。
注意点としてはすでに存在するセーブデータにMODを導入した場合、ユニットがクラスチェンジ、またはレベルアップすることでスキルリストが更新され、追加された勧誘スキルを選択できるようになるという点です。
序盤からアンデッド系を勧誘できるのはなかなか面白くなると思うし、ある意味SFC版のタクティクスオウガに近づいたと言える変更点かもしれません。
棍の武器ダメージ計算式については、作者さんによるとなぜか棍だけ特殊な(かつ弱い)ダメージ計算式になっていたため、両手武器と同じ計算式に変更したそうです。
ただ棍自体はその多くが攻撃力が極端に低く(1とか)設定されているので、どちらにしても大したダメージは期待できないものと思われます。

最後に槍の射程距離変更についてですが、これは一部の槍に見られる「射程2〜3」が「射程1〜2」に変更されている、といった具合です。
例えばコルヌリコルヌがそうで、この槍は本来射程2〜3で、自分の真正面に隣接するユニットには攻撃が当たらず、その先2マスが攻撃対象となっています。それがMODでは射程1〜2と、通常の槍と同じ射程に変更されています。
オフハンドバグの修正
このバグについては実のところ僕も詳しくないのですが、個別にバグを修正するMODでは以下のように説明されています。
基本的にバニラの「タクティクスオウガリボーン」では、ユニットの両手スロットに片手武器×2、または片手武器+盾のように両方埋めておかないと、ゲーム側が魔法やスペシャルスキルで武器のダメージ計算を完全に無視するという仕様になっています。
特に、武器に属性ボーナスが付いてくるようになる後半では、この仕様が魔法ダメージの低下に直結します。また、両手武器はこの仕様の影響でさらに不利になります。
しかも、敵の魔法系ユニットの多くは明示的にオフハンドを空に設定しているため、彼らも自分の武器の恩恵をほとんど受けていません。
とのことで、ダメージ計算に関わる深刻な問題となっているようですね。幸いにも「TOR Micro Overhaul」自体にバグ修正が含まれているそうですので、これで本来設定されている通りのダメージ計算が実現するということになります。ありがてぇ。
感想
実際にMODを導入して変更箇所を確認してみると、ゲームがいい塩梅で面白くなりそうな気がしました。オーバーホールMODと名は付いていますが、あくまで「ここはこうした方がいいんじゃないか?」といったレベルの変更点に留まっており、元のタクティクスオウガリボーンのゲーム性を根底から変更してしまうようなMODではないところが気に入りました。ローグの復活、MP回復アイテムのクラフト、バグ修正と、バニラのちょっとした不満点を解消してくれるというか。
MODを入れて通しでプレイしたわけではないのでハッキリとおすすめだ!とは言えませんが、もう一度ゲームを遊んでみるのも悪くないなという気分になったというのが本音です。
バニラのタクティクスオウガリボーンに不満を感じていたという方はこのTOR Micro Overhaul含め、Nexusで公開中のMODを導入して再プレイしてみるというのもいいんじゃないかと思います。まぁ、導入は自己責任で😅
では…MOD込みでタクティクスオウガリボーンを遊びながら、FFTリマスターを待つとしますか。
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